日本人に多いとされる、上顎の前歯が前方へと突き出ている『出っ歯』。
場合によってはチャーミングな印象があるように感じられますが、本人にとってはコンプレックスの原因であるケースもあります。
また、状態によっては口腔環境を悪化させる原因となってしまい、お口の中の健康を損なうリスクも出てくるほどです。
出っ歯は見た目だけの問題ではありません。
出っ歯であることによってさまざまな支障や、新たな疾患の要因となりかねず、矯正治療によって改善することをおすすめします。
そこで今回は、歯科治療の専門家としての立場から、出っ歯の原因やリスク、治療法についてご説明します。
出っ歯の症状と原因
初めに、出っ歯の症状と原因についてご紹介していきましょう。
出っ歯とは、不正咬合の一種
出っ歯とは、上顎の前歯が下顎の前歯に対して覆い被さるように咬み合い、上額の前歯より下顎の前歯が4mm以上前に出ている場合、出っ歯であると診断されます。
また出っ歯の正式名称は『上顎前突症』といい、不正咬合の一種です。
- 口元や横顔からも出っ歯が確認できる
- 上唇が盛り上がっている
- 食事中、上下の前歯で食べ物を噛み切れないときがある
- 発音を難しく感じるときがある
- 口を閉じる動きが辛い
- 口を閉じると下あごにしわができる
上記のような問題に心当たりがあるのなら、出っ歯である可能性が高いと言えるでしょう。
出っ歯による健康面でのリスク
出っ歯は、『虫歯や歯周病になりやすい』『前歯を怪我しやすくなる』『咀嚼力が弱くなる』『顎関節症になりやすい』『全身のバランスが悪くなる』など、健康面でのリスクも多く引き起こしてしまう恐れがあります。
出っ歯となる前歯が支障となり、口を閉じることができない場合、お口の中が乾燥してしまうと、唾液が分泌されにくくなり、虫歯や歯周病の原因となってしまいます。
また、歯の位置が正しい場所になければ歯磨きがしづらくなり、さらに虫歯や歯周病になるリスクが高くなるケースも少なくありません。
怪我や転倒によって前歯が破裂しやすくなるケースもあります。さらには噛み合わせが悪くなることによる咀嚼力の低下や、歯並びの悪さによるあごへの負担が生じて顎関節症のリスクが高くなるケースも。
噛み合わせの悪さが身体の歪みを作り、肩こりや頭痛などの症状をもたらすこともあります。
出っ歯の原因
出っ歯の原因には、『遺伝的要素』『成長による問題』『癖』『フレアーアウト』などがあります。
遺伝的要素
遺伝的要素としては、両親から骨格的に遺伝する可能性が高いことを指します。もし両親が出っ歯気味であれば、それは遺伝が原因だと考えて良いでしょう。
家族全体の生活習慣などではなく、あくまで、骨格が遺伝したのだと考えるのが一般的です。
成長や癖による問題
上あごと下あごがバランスの悪い形で成長したり、指しゃぶりや口呼吸、口の半開きなどの癖悪影響になったりして、出っ歯になるケースもあります。
フレアーアウト
歯周病や噛み合わせの悪さが徐々に歯を移動させて、出っ歯を引き起こすフレアーアウトが影響するケースも多くあります。
出っ歯を自力で改善できる?自力での矯正による危険性
出っ歯を改善するために「できれば自力で何とかしたい」と思われる人も中にはいるかもしれませんが、自力で出っ歯を改善することはまずできません。
ただ単に歯を動かすだけと簡単に思えますが、矯正をおこなうためには検査を行い、専門知識をもった歯科医師がしっかりと治療計画をたてて、初めておこなえる行為です。
自力で出っ歯を改善するセルフコントロールは、歯を傷つけてしまう
「棒で歯を叩いたり指で歯を押したりすれば、自力でも出っ歯を改善できるかもしれない」と考える人もなかにはいらっしゃるかもしれません。
しかし、棒や指などの力で押しても、歯にかかる力や方向がいつでも正確であるとは言いきれません。
また、力が歯にとって負担となり、かえって歯並びが悪くなったり歯や周囲組織を傷つけてしまうリスクが高まったりなど、望んでいない結果を迎えることさえあります。
先にご案内した通り、歯を動かすためには目視することができない、顎の骨の状況を知るために検査を綿密におこない、専門的知識的な知識と技術を用いて初めて治療をおこなうことができるため、決して自力で歯を動かそうとしないでください。
通常の治療では歯に少しずつ力をかけて数ミリずつ動かしていき、理想とする歯並びになるまで2年~3年程の期間が必要とされています。
歯科医院でおこなう出っ歯の治療方法
歯科医院では、『ブラケット矯正』『マウスピース矯正』『セラミック矯正』『外科手術』などの方法で出っ歯を改善できます。
ブラケット矯正
ブラケットと呼ばれる矯正装置を歯につけてワイヤーを通し、歯を少しずつ引っ張りながら移動させて歯並びを改善する方法です。
平均で2年から3年の治療期間が必要になります。
- 幅広い症例に対応できる
- 安定した治療の成果を期待できる
- ほかの治療法よりも価格が安くなるケースが多い
などのメリットがある一方、
- 見た目が目立つ
- 取り外しができないため、汚れや磨き残しがたまりやすい
- 食事中に食べ物が引っかかる
などのデメリットがあります。
マウスピース矯正
薄く透明なマウスピースを一定時間装着し、歯を動かす方法です。治療期間の目安は1年から3年ほどです。
- 見た目が目立ちにくい
- 取り外しができるため、磨き残しや汚れがたまりにくい
- 治療中の痛みが出にくい
など、ブラケット矯正にありがちな問題を避けられる一方、
- 装着する時間によって治療期間が左右される
- 複数回の型取りが必要になるケースがある
- 対応できる症例が限られる
などのデメリットがあります。
その他、「ブラケット矯正・マウスピース矯正」共通のデメリットとして、
歯の骨に埋まっている部分が短くなる「歯根吸収」と言う現象を起こす事があります。
又、治療後も「後戻り」が起こらないようにする事が肝心です。
セラミック矯正
矯正装置を使わない矯正治療です。
天然の歯を削ってセラミックでできた被せものを被せ、歯並びをきれいに整えます。
治療期間は平均で1か月から3か月で、ラケット矯正やマウスピース矯正よりも短い期間で治療を終えられます。
- 治療中の痛みを大幅に軽減できる
- 歯の色を選択できるので、見た目が自然な仕上がりになる
などのメリットとともに、
- 天然の歯にダメージを与える
- 時間がたつとセラミック素材が変色する
- 被せ物が取れることがある
などのデメリットがあることも、あらかじめ知っておく必要があります。
外科手術
骨格的な問題が原因で出っ歯となってしまったと判断された場合は、ブラケット矯正治療やセラミック治療だけでの改善は不可能です。
外科手術を受けてからブラケット矯正で歯並びを整えていく方法が採用されます。治療期間は1年から3年かかるケースが多いです。
- 難しいケースの出っ歯を改善できる
- 保険適用で治療が受けられるケースがある
- 歯を抜かずに矯正治療を受けられるケースがある
などのメリットと同時に、
- 全身麻酔を受けて手術を行うため、入院する必要がある
- 手術直後に腫れや口の開けづらさを感じる
- 定期的に通院する必要がある
などのデメリットとも向き合わなくてはならなくなります。
どの方法を選んでも、メリットとデメリットは必ず出てきます。歯科医師としっかりと相談したうえで、不安がないかたちで治療を受けることが望ましいと言えるでしょう。
出っ歯を改善するなら
整った歯並びが見える笑顔は、いつ見ても爽やかで健康的です。
必ずしも出っ歯が悪い印象を与えるわけではありませんが、実際に前歯のバランスが気になって、「できることなら改善したい」と思っている人も多いでしょう。
出っ歯を改善するには、やはり矯正治療が必要になります。
しかし、矯正治療は時間もお金もかかる方法であるためか、自力で改善したいと思う人も少なからずいらっしゃるかもしれませんが、歯についてよく知らない状態で歯を動かそうとすると、期待通りの成果が出ないばかりか思わぬ怪我や悲劇を招いてしまうケースがあるため、決しておこなわないでください。
矯正治療は確かに時間的・金銭的な負担が大きくなりますが、その分しっかりとした対応をしてもらえるため、確実に出っ歯を改善したいと考えるなら、ぜひ検討されることをおすすめします。
出っ歯を改善して、自信をもって笑顔を見せられる歯並びを整えたい人は、ぜひ歯科医院で実施しているカウンセリングを受けてみましょう。
なお、当院での矯正治療に関する詳しい内容はこちらよりご確認いただけます。