前歯の裏側が虫歯になってしまった方に、原因や対処法を解説します。
前歯は虫歯になりやすい?
前歯が虫歯になってしまうと、残念ながら歯の色合いが黒ずんできたり、白濁してきたりすることがあります。
そのため、正面から見た際に、他人から目につきやすいところに虫歯ができてしまうため、不衛生な印象や、自己管理ができない人といったイメージを持たれかねません。
前歯は、コミュニケーションをとる際に、大切なパーツともいえます。
しかし、裏側が虫歯になってしまったとなると話はまた別です。裏側は、審美的にも人から見える位置ではないため、気づかれたりすることはありません。
このため、もし虫歯になってしまっても、目立たない、自分の印象に差が出ない、などのメリットはありますが、反面、もし虫歯になってしまっても気づきにくいことが特徴です。
今回は、前歯の裏が虫歯になる原因や、虫歯になってしまった際の治療方法について説明いたします。
前歯の裏が虫歯になる原因
磨き残しがある
成人の歯のパーツのうち、正中から上下左右に3本ずつが前歯に相当します。
中切歯(ちゅうせっし)、側切歯(そくせっし)、犬歯といわれる歯が1本ずつ、上下左右の計12本で構成されています。
前歯の形をじっくり見たことはありますか?毎日の歯磨きの際に、歯をじっくり覗いている人も、特に上の前歯の裏側はあまり見たことがないのではないでしょうか?
上の前歯の裏側を見るためには、口の中に小さなミラーを入れて映してみるしか方法がありません。そのため、目視できないパーツ=磨き残しがあるパーツともいえます。
何より、上の前歯の裏側には舌側面窩(ぜっそくめんか)と呼ばれるくぼみがあります。
特に日本人の場合には、シャベル型切歯が多いといわれています。
前歯の表面をじっくり見ると表面にうっすらと溝があるのを確認できるでしょうか?この溝は、歯の裏側にもあり、汚れがつきやすい部分になります。
これらの溝が合流したところには基底結節と呼ばれるふくらみができるため、ブラッシングをする際には、歯の裏側もしっかりと磨くことが大切です。
また、稀ですが、舌盲孔と呼ばれる虫歯のできやすい箇所がある人もいるため、歯の裏側は念入りに磨かないと磨き残しが起こりやすいパーツなのです。
唾液が届かない
お口の中には、常に唾液があるため、潤った状態です。しかし、唾液は上顎ではなく、下顎の舌や口唇の周りに貯留しているため、上の前歯には、下の前歯と比べて唾液が少ない状態です。
唾液には、様々な酵素が含まれており、自浄作用や抗菌作用といって、虫歯を引き起こす菌の働きを弱める力があります。
唾液によって、汚れが流されることにより、歯の表面に貯留するプラークや歯石が減少することで、虫歯が起こりにくくなるのです。
しかし、先ほどお伝えしたように、上の前歯には唾液が届きにくい構造になっています。
大切なのは、口呼吸など口を常時開けているといった癖を治すことです。口呼吸の場合、余計に口腔内が乾燥しやすく、虫歯のリスクが増加します。
前歯の裏が虫歯になってしまった場合の対処法
虫歯ができてしまった場合の対処方法を解説します。
まだ虫歯の初期段階でCO(シーオー、シーゼロ)と呼ばれる白濁段階であれば、フッ素を塗って様子を見ることもありますが、今回はより虫歯が進んでしまった段階についてご説明いたします。
削って詰め物をする
まず、虫歯の箇所が小さく神経まで到達していない場合に行われる処置です。
これは、虫歯で着色したり、黒ずんだ箇所、歯質が軟化した箇所を最小限に切削し、レジンを詰めたりする方法です。
レジンの色は、歯の色にあったものを選択するため、治療直後には詰めた箇所は遠目にはわかりません。
しかし、レジンには吸水性があるため、経年変化により劣化が起こり、色調が黄ばんできます。気になる場合には、数年後に詰めなおしを行うことがあります。
削って被せ物をする
次に、より虫歯が進んでしまった場合です。
虫歯の範囲が広範囲の場合には、歯を削りかぶせ物をセットする治療が一般的です。
前歯の場合には、「レジン前装冠」、「メタルボンド」、「セラミッククラウン」といったかぶせ物が適応です。
これらは素材の名前で呼ばれていますが、レジンはプラスチック、メタルボンドとは中身は金属だけれども外に陶器の素材を貼り付けたもの、セラミッククラウンとは陶器のような素材もののことです。
これらの素材で作成さいれた被り物をつけます。かぶせ物をセットするスペースを確保するため、形成といって麻酔を行った後、歯を一層削ります。
削った後、歯型をとり、次の来院の際に、かぶせ物をセットします。前歯なので、削った後は、TEC(テック)と呼ばれる仮歯をセットして当日は帰宅します。
時に、仮歯があまりにも上手な先生がいると、仮歯の状況に満足してしまい、通院をやめてしまう方がいらっしゃいますが、あくまでも仮歯です。
硬いものを咬めば壊れてしまいますし、永久的なものではありません。その点は、注意しましょう。
次にさらに虫歯が進んでしまった場合についてです。神経に近接しているため、神経の保存ができない場合には、神経を取り除く抜髄(抜髄)という処置を行います。
抜髄を行った後には、歯のかぶせ物をするため、コアといって土台をセットします。
このコアは金属で作る場合や、レジンで作る場合など様々な方法があります。コアをセットしてから、クラウンなどのかぶせ物をセットするため、治療回数が2回ほど追加されます。
虫歯と一緒に、歯の形態や歯の色合いを治療したい場合に選択される方法が、ラミネートベニアです。
この方法は、歯と歯の間に隙間がある歯間離開の治療や、ホワイトニングでは白くならない歯の治療に有効な方法です。
歯の表面を全体的に一層削ります。その上に、薄いセラミックを貼り付ける方法です。治療のイメージを説明する際には、ネイルチップを付けるイメージをお伝えするとわかりやすい方が多いようです。
ラミネートべニアについては、詳しくは以下の記事をご覧ください。
★ラミネートベニアとは?気になる施術方法や治療のメリット・デメリットを紹介
前歯の裏が虫歯になった場合、保険適応治療は可能?
前歯の裏が虫歯になった場合の治療方法の種類については先ほどお伝えしました。
もちろん、歯科治療には保険適応治療と自費治療があることはご存知の方も多いかと思います。
保険なのか、自費なのか、受け方によって大きく価格が変わります。
保険適応の治療法(3割負担)
- レジンによる詰め物:1本あたり約3,000円前後
- レジン前装冠:1本あたり約10,000円
保険診療のため、全国一律で同価格ですが、通院の回数やレントゲン撮影の枚数、型取りの材料によって若干の違いがあります。
目安として上記程度です。
自費診療
自費治療に該当するのは、審美性を患者様が重視する場合です。
より綺麗に見える素材や本物の歯に近い素材を使う時、自費治療になります。
例えば、クラウンと呼ばれる金属を一切含まない素材であるものなどは費用が高額になります。
保険が適用となる素材は、主に機能回復を重視するものであり、審美性には優れていないことが多いので、自由診療により自然で綺麗な歯を希望する人が多くなっています。
自費診療の場合には、再診料やレントゲンなどの検査費用も自費料金になるため治療前にしっかりと総額がどれくらいかかるのかを確認することが大切です。
また、歯科医院によって値段が異なります。単純に価格の安さではなく、多くの症例を経験している歯科医師のもとで治療を行うことをお勧めします。
インターネットやブログで確認できる症例の他に、クリニックに来院した際に見せてもらえる症例があります。
どれほどの工数をかけて仕上がった症例なのかを見て、判断すると良いでしょう。
前歯の裏の虫歯を進行させない予防策
前歯の裏側が虫歯になってしまった際、届きにくい位置ではありますが、予防策として進行させない努力が必要です。
ブラッシングする
前歯を虫歯にしないためには、ブラッシングあるのみです。
歯の表面は目視できるため歯ブラシで一生懸命磨くことができるのですが、歯の裏側は見ることができません。
そのため、歯ブラシを縦にして前歯の裏側に当てて一本一本を10秒ずつ磨く習慣をつけましょう。
また、歯と歯の間には汚れがたまりやすいため、デンタルフロスを利用することをお勧めします。
使い慣れるまでには、少し練習が必要ですが、糸状のものの他に、柄が付いたタイプも販売されているため、ご自身でより簡単に利用することができます。
ただし、理屈は分かっていても危険なのは「自己流」なのです。目視出来ない部分と言う事は、ブラッシングにより知らずに傷を付ける事もあります。磨き残しがある上、知らぬ間に傷を付けてしまったら本末転倒です。
歯科医院では「磨いていると、磨けているは違います」と説明しています。まずは、歯科医院で正しいブラッシング方法と用具を教わって下さい。
ブラッシング方法を身に付けてしまえば、用具はドラッグストアやスーパーのオーラルケアグッズの売り場にも今は販売されています。
又、半年ぐらい経つと忘れてしまい自己流に戻る方がほとんどですのでブラッシュアップを兼ねてブラッシング指導を受けて下さい。口腔内環境が変わり用具の選択も変わっているかもしれませんよ。
唾液が出やすい習慣作りをする
そして、口呼吸の癖がある方や、お口を開けたままにしている方は、お口の乾燥を引き起こしてしまうため、虫歯の悪化を招きます。
これらの習慣の除去を行いましょう。
例えば、よく噛んだ食事や普段から水分をとることは非常におすすめです。
また、唾液検査を行うことで、唾液に含まれる成分や菌の数を調べることができます。
それにより、歯と歯茎の健康について考えたり、口内の清潔具合やレベルがわかります。
まとめ
前歯の虫歯は、他人から目につきやすいものです。
特に上の前歯については、裏側は磨き残しが起こりやすく、唾液が少ないため虫歯になると進行しやすい箇所です。
前歯のケアには、裏側をしっかり磨くために、タフトブラシやデンタルフロスなどを利用します。
先ずは歯科医院で診断してもらいセルフケアの確認をしてもらいましょう。