「私の前歯大きすぎない?」「生え変わったばかりの子供の前歯が大きすぎて心配」など、前歯に関する疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、前歯が大きいのはなぜか?についてご説明いたします。
原因や治療法を知ることで、ご自身のお悩みにあった解決方法を見つけていきましょう。
前歯が大きい!その原因は?
前歯が大きいことには、様々な原因があります。
前歯部には一番真ん中にある中切歯とその隣にある側切歯、そして前から数えて3番目にある犬歯(糸切り歯)の左右に計6本、上下合わせて12本の歯が該当します。
特に前歯の大きさが気になる場合には、上顎の中切歯の大きさが影響します。
①歯の大きさ
前歯は、生後7~8歳で生え変わります。
しかし、口腔内で見える歯の大きさ自体は、生後4~5歳の時点で完成しているのです。歯が大きくなる影響としては、遺伝があります。
中切歯そのものの大きさや、歯と顎の相対的なバランス、側切歯が小さい矮小歯(わいしょうし)と呼ばれる場合には、余計に前歯が大きく強調されてしまいます。
②出っ歯
出っ歯とは、歯科用語では上顎前突や歯の唇側傾斜と呼ばれる状態です。
これも遺伝的な歯と顎のバランスの問題や、歯の傾斜にも原因があります。
③習癖
習癖とは、前歯で下唇を咬む癖や、口呼吸などが考えられます。
これらの習癖により、上顎自体が前方に位置してしまうことや、過剰に上顎が発達してしまうためです。
④歯肉退縮
歯周病の悪化などによる歯肉退縮といって歯肉のライン下がってしまうことや、ブラッシングの力が強すぎることで歯肉退縮が起こり、歯の面積が大きくみえることです。
加齢や噛み合わせの影響でも起こります。嚙み合わせでは、一部の歯に過度な力が加わるなど、不適切な咬合が原因になります。
⑤歯の生えかわり
後ほど、ご説明いたしますが、もちろん、混合歯列期といって歯の生えかわりの時期にはお口の大きさに対して相対的に前歯は大きく見えます。
前歯が大きい時の対処法
まずは、大人の場合についてご説明いたします。
子供の場合は、まだ安定しない場合が多く、すぐに対処することはあまり現実的ではありません。
歯科医師への相談も可能ですが、基本的には様子を見ることがおすすめです。
そして、成人した大人の前歯が大きすぎる場合にはいくつかの対処方法があります。
歯を削る
ディスキングといって歯の最表面にあるエナメル質を一層削る方法です。
薄いやすり状の器具を歯と歯の間に挿入して削ります。
知覚過敏を起こす可能性や、虫歯になりやすいリスクがあるので、サイズの縮小には制限があります。
矯正をする
歯科矯正は、出っ歯など歯並びによる前歯の大きさに対して有効な治療方法です。
他の歯よりも前方に位置している場合には、わずかな遠近感で考えても前歯が大きく見えてしまうからです。
ワイヤー矯正や、マウスピース矯正により、歯並びを修正することで前歯が目立たなくなります。
特に上あごの過成長や、下あごの劣成長などの場合には、成人になってからより、成長期での対応が治療の成果に重要になってきます。
ラミネートべニアをする
歯の表面にあるエナメル質を削り、薄いかぶせ物をする方法をラミネートべニアといいます。
しかし、この方法は、歯のサイズを小さくすることはできませんので注意です。
あくまでも歯列に対する凸凹やわずかな形状、色合いの修正にしかなりません。
歯自体の大きさはかわりませんが、歯の形状の修正により、より自然な口元を作り出すことができます。
セラミック矯正(セラミック系クラウン)
セラミック矯正といって、ご自身の前歯を一層削り、セラミックのかぶせ物をする方法があります。
特に、前から2本目の側切歯が小さい場合などに、大きさや形をそろえる際に使用される方法です。
隣り合う歯の大きさが適切なサイズになるので、相対的に中心の前歯が目立つことがなくなります。
この方法は、前歯のみが歯並びが悪い方や、ホワイトニングでは白くすることができない歯の色合いを修正するためなど、審美歯科領域でよく行われている治療方法です。
前歯だけ大きいという悩みは出っ歯とは別?
「前歯が目立つ」という点では同じですが、前歯が大きいことと、出っ歯であることは、根本的に異なります。
前歯が目立つ場合の治療方法にはそれぞれの原因にそった治療方法があります。
自分が前歯のコンプレックスでお悩みの場合は、「前歯自体が大きいのか」「(形状などの都合で)出っ歯になっているのか」その点を確認するようにしましょう。
①前歯自体が大きい
前歯が大きいことは、遺伝的な要素や口の大きさや隣り合う歯に対する相対的なサイズの問題です。
このように、前歯自体の幅の 大きさが問題の場合には、歯を削る(ディスキング)が有効です。
ディスキング後に隙間が出来ますから歯列矯正で埋める必要があります。
長さが気になる場合はエナメル質内に留める条件で削る事は出来ます。
ディスキングを含め削る事は後から滲みたり、痛みが出たり副作用の可能性は否めませんので安易にする方法ではありません。
隣り合う歯が小さすぎる矮小歯の場合には、矮小歯にセラミッククラウンをセットする、ラミネートべニアを行うなど、かぶせ物で治療をすることも可能です。
治療期間や回数の目安として、ディスキングは1~2回、セラミッククラウン、ラミネートべニアのセットには、3~4回の1~2か月程度を想定するとよいでしょう。
②出っ歯
一方、出っ歯とは、上あごの過剰な成長や下あごの劣成長、前歯の歯の傾斜や凸凹など歯の並び方による問題です。
このような原因が考えられる場合には、歯列矯正が有効です。
歯列矯正には、ワイヤー矯正、マウスピース矯正、外科矯正といったようにお口の状態によってさまざまな方法があります。
歯科矯正は歯の移動に1~2年程度、後戻りの防止同様の期間を必要とします。
骨格性の出っ歯でも軽微の場合や歯の傾斜、放出位置の異常の場合はラミネートベニア、クラウンなど補綴処置で対応できる範囲があります。
妥協する部分は出るかもしれませんが、お口の中の型取りをして診断用模型の作製をすることにより術後のイメージを確認する事が出来ます。
期間、金額、妥協点、術後のメンテナス方法などを加味し治療方針を歯列矯正と比較するのも良いでしょう。
部分的に歯列矯正と補綴処置を混在させる方法もあります。
「前歯が目立つ」と思っても、原因には簡単に言うと①大きさ、②出っ歯の2種類があり、それぞれの状態によって治療方法が異なるのです。
ご自身の状態が、「大きさ」によるものか、「出っ歯」によるものかわからない場合には、まずは歯科医師に相談することをお勧めします。
子供の前歯が大きいのは気にしなくていい?
子どもの前歯が大きすぎることを歯科医院でご相談される方がいらっしゃいます。
もちろん、生え変わりの時期の歯並びは、お口のサイズに対して前歯が大きく目立ちすぎるように見えるのは事実です。
特に、小学校低学年の頃が多いのではないでしょうか。
実は、この生え変わりの時期を、「ugly duckling phase/stage」といい、日本語では【みにくいアヒルの子期】と呼ばれています。
簡単に一言でいうと、見た目がちょっと気になる時期です。
もちろん、多くの場合一時的であり、成長には必要な過程です。
前歯と前歯の間に隙間が発生し、余計に大きく見えてしまうのですが、生え変わりの過程で犬歯や小臼歯が生えてくる頃には、しっかりと隙間がふさがるので、心配はありません。
みにくいアヒルの子期は、すべてのお子様にある成長過程です。
では、生え変わりの時期に注意が必要な歯並びとは、どのような状態でしょうか?
まず、犬歯や小臼歯が生えているのに、前歯の隙間がふさがらない状態です。
このような場合には、以下の2つの原因が主に考えられます。
①上唇小帯の位置異常
上の前歯の中央付近には、上唇小帯と呼ばれる粘膜のヒダが1本あります。
この上唇小帯が過剰に発達していると、前歯と前歯の間に入り込み、歯と歯の間に隙間を作ってしまうのです。
このような場合には、局所麻酔を行い、上唇小帯を切開することで、適切な位置に小帯が修正され前歯の隙間をふさぐことができます。
②正中過剰歯
先にご説明した上唇小帯の位置は特に問題がないのに、いつまでたっても、前歯の隙間が閉鎖しないことがあります。
このような場合には、歯科医院を受診しレントゲン写真を撮影してみましょう。
稀なケースではありますが、前歯と前歯の根っこの間に、過剰歯といって、余剰な歯が埋まっている可能性があるからです。
画像診断により過剰な正中埋伏過剰歯があった場合には、抜歯を行うことで対応することができます。
基本的には、小学校入学前後頃にあるみにくいアヒルの子期にみられる前歯の大きさは、問題はありません。
しかし、上唇小帯の位置異常や、正中過剰歯といった原因がある場合には、生え変わりがスムーズに行われないため、歯並びに悪影響を及ぼします。
また、小さなお子様の場合には、唇をかむ癖や、爪かじり、指しゃぶり、口呼吸といった悪習癖が残っていることもあり、歯並びに影響を起こすことがあります。
悪習癖は、日常生活の中で、徐々にしか取り除いていくことができません。
正常なお口の発達や美しい歯並びの獲得のためにも、根気よくお子様に指導していきましょう。
毎日の積み重ねにより、高額で時間のかかる歯ならび治療を行わなくてもよくなるかもしれません。
まとめ
多方向からご説明しましたが、一番大切なのはバランス、プロポーションです。
健常であれば中切歯は他の歯に比べて大きく長いのが一般的です。
前歯は黄金比率に当てはまるか当てはまらないか、が審美的に大切ですから大きくてもバランスが良ければ歯科的に問題ありません。
バランスが黄金比率から離れているのかを歯科医師に相談してみましょう。
又、噛み合わせが原因で不調和がある場合は一度直しても再度バランスが崩れます。
審美歯科は実際は限られた歯科医師でないと対応できない分野です。
何件かの歯科医院に問い合わせるのも良いでしょう。
お子様の前歯の大きさが気になる場合には、みにくいアヒルの子期の可能性もありますが、上唇小帯の位置異常や、埋伏過剰歯といった可能性も否定できません。
まずは悩まず、気軽に小児歯科医に相談することをお勧めします。