今回の記事では「前歯に用いる仮歯のメリットって何?」「仮歯ってそもそもどんな役割があるの?」と疑問を抱えている人に向けて、前歯に用いる仮歯について詳しくご紹介していきます。

仮歯とは辞の如く、最終の歯 (補綴物と言います)が入る前までに仮に入れる歯のことです。

仮歯について不安や悩み、気になる点がある人はぜひ参考にしてみて下さい。

前歯の仮歯が取れたときの対処法も併せてご説明いたします。

前歯に用いられる仮歯とは

前歯に用いられる仮歯にはどのような特徴があるのでしょうか?詳しくご説明していきます。

仮歯とは

仮歯とは「テンポラリークラウン」、「テック」、「プロビジョナルレストレーション」、「プロビ」といくつかの呼称を持つもので、歯の治療を行う際に使用する「一時的な仮の被せ物」のことを意味します

補綴物が出来上がるまでの仮の歯として仮歯が活用されたり、人工歯根で失った歯の役割を補うインプラント治療においても、上部構造である補綴物が出来上がるまでの仮歯として、活用されたりしています。

仮歯の性質

レジンと呼ばれる歯科用プラスチックなどの材質を用いて製造されている仮歯ですが、一時的に使用する歯であるため、硬いものなどを噛むと破損してしまう可能性があります

また、天然の歯ではないためのっぺりとした質感で、通常、単色の材料を使用する為、色味も透明感や自然なグラデーションを再現することは出来ません

天然歯をよく見ると非常に複雑な色合いをしていることが分かります。

又、保険外の補綴物を入れる際や診療計画等により長期的に使用する場合は、仮歯でも一般的なレジン以外の材料(硬質レジン、充填用レジン、レジンを前装に使う金属冠等)を使用し細かい形態や最終補綴物に近い色合い、イメージを表現する手法も行います。

仮歯の期間

仮歯の期間は治療の進行状況によって異なるため、患者さまによって様々です。

そのため期間を確認する場合は歯科医院に直接聞いてみましょう。

また、仮歯を付けたまま治療を続けずに放置してしまうと、新しく作製している補綴物が合わなかったり、仮歯の破損トラブルを引き起こしたりする原因となってしまいます。

そのため期間内にしっかりと受診をして、治療を進めて行くことが大切です。

仮歯の値段

仮歯の値段の相場はいくら程度なのでしょうか?保険適用で製作できる場合とできない場合があります。

基本的には、治療部位、内容、使用する仮歯の種類により変わりますので、歯科医院で確認する事をお薦めします。

複合的な要素により、金額が決定するため、一概に言う相場というようなものはありません。

しかし、保険外で作製する仮歯は、やはり保険適用内のものに比べて、1本数千円~数万円と値段が高くなっていることが特徴です。

保険内で製作する仮歯とは違う物で、耐久性や審美性に優れている素材を使うため、素材の希少性などからどうしても値段が高くなってしまうのです。

又、フロス以外の補助的清掃用具(歯間ブラシ、スーパーフロス等)を他の部位に使用している人、歯肉の状況により隣接部に使用する必要がある人など、徹底的に最終補綴物に模倣する事を行います。

予算は必要ですが、審美性、耐久性はもちろんの事、清掃環境も踏まえた優れた仮歯と言えます。

仮歯を前歯に用いるメリット

仮歯を用いるメリットをご紹介します。

口腔内の変化を防ぐ

治療工程で歯を筒形に削るため、上下・左右に隙間ができ、口腔内にスペースが生まれてしまいます。

スペースが存在してしまうと、歯が空いている空間に移動しようとしたり、歯肉が覆い被さったりしてしまいます。

そのため仮歯は口腔内の望ましくない変化を防ぐために効果的なアイテムです。

刺激から守る

仮歯には外部からの刺激を守る役割があります。

神経が生きている歯の場合、治療中デリケートになっており、むき出しな状態です。

そのため温度による刺激から、ブラッシング時に受ける刺激、食べ物を噛むときの刺激まで、様々な刺激によるダメージを受ける可能性があり、これらの刺激から守る役割があります。

また、神経が死んでいる歯、質活歯の場合は、歯質がもろくなってしまう傾向にあり、上下の歯が咬み合う刺激から歯を守る役割もあります。

さらに、口腔内環境が悪い場合、虫歯菌が増殖し二次虫歯になってしてしまう可能性もあり、そんな外部の刺激から守るために仮歯を用います。

見た目を良くする(歯肉ラインが綺麗になる)

特に前歯などが欠けていたり、無かったりすると、審美性に劣り、印象を大きく左右されます

治療期間中でも見た目を気にせず過ごしたいという人には嬉しいアイテムです。

歯の治療中に人と食事ができなかったり、人前で笑顔になれなかったりと悩んでいる人がいますが、仮歯を用いることで状況が改善されます。

清掃性の確認

最終の歯(補綴物)が入る前に、しっかりとオーラルケアができているか、確認するための役割もあります。

部位によって歯ブラシの持ち方や動かし方、デンタルフロスや歯間ブラシなどの持ち方も異なるため、仮歯を活用して、歯周病予防の観点からも模倣する事を行います。

口腔内での変化を発見する(保険外診療の場合)

前歯の受けている力はとても繊細で担当している歯科医師でも気が付かない時があります。

天然歯が削れている、歯茎との境目が削れている、何本か長くなっているなど 違和感がある歯列の際は意図的に長期に仮歯の期間を設定し仮歯の形態変化を確認します。

前歯に仮歯をつけるときに気をつける点

前歯に仮歯を装着する場合、どのような点に注意すればいいのでしょうか?気を付けるべきポイントをご紹介します。

食べ物に気をつける

仮歯を付けているときは食べ物に気を付けないといけません。

キャラメルやチューインガムなど粘着性の高い食べ物は、仮歯が取れてしまう可能性があります。

また、硬い食べ物は仮歯が損傷してしまう可能性が高いので避けるようにしましょう。

万が一、仮歯が取れてしまったり、欠けてしまったりした際は誤飲しないように気をつけて下さい。

誤飲した際は慌てず速や かに歯科医院に連絡しましょう。

こまめにケアする

仮歯は天然の歯ではないものの、こまめなケアをすることが大切です。

レジンと呼ばれる歯科用プラスチックなどの材質を用いて製造されている仮歯ですが、キメが粗く色素沈着しやすくなっているため、清掃をおこたってしまうと、着色汚れが目立つようになってしまいます。

また、汚れが溜まってしまうと口臭や周辺歯肉の炎症の原因になります。

ブラッシングを行う際は強くこすり過ぎないように注意して下さい

プラスチックでできているため削れてしまったり、力が強すぎると仮歯が取れてしまったりする可能性があります。

また、仮歯の隙間に食べかすなどの汚れがたまりやすいため、歯間ブラシやデンタルフロスなどをうまく利用してしっかりとケアを行いましょう。

その際には、以下の点に注意しましょう。

歯間ブラシ

歯間ブラシのサイズはなるべく小さいもの、毛先が軟らかいものを選びましょう。

また、無理に歯間に押し込んでしまうと歯肉を傷つける恐れ、仮歯が傷つけたり、取れてしまったりする恐れもあるため、歯間ブラシを小刻みに前後に動かしながらおこないましょう。

デンタルフロス

歯間に入れたフロスを上から引き抜くのではなく、横から引き抜くイメージでフロスを扱いましょう。

特に歯間でフロスが引っかかっている場合、無理に引き抜いてしまうと仮歯が取れてしまう恐れもあり、注意が必要です。

適した施術をおこなう歯科医院を選ぶ

補綴物を製作する際はもちろんのこと、仮歯を入れる際に注意するべきは、きちんと適した施術をおこなう歯科医院を選ぶことです。

仮歯製作は精密な作業になり、しっかりと施術がおこなわれずに、トラブルになってしまうこともあります。

各歯科医院の症例を見たり、歯科医師に直接質問などをしたりしながら、信頼のおける歯科医師に依頼するようにしましょう。

前歯の仮歯が取れてしまった場合

仮歯を前歯に装着していると取れてしまうことがあります。

仮歯が取れてしまった場合、どのように対処をすればいいかご紹介いたします。

破片を捨てないようにする

取れてしまった仮歯を捨てないように気をつけて下さい。

仮歯は、再利用できる場合は、再び同じように装着を行うことができます。

取れてしまった破片は非常に小さく紛失しやすいため、小物入れやジップロックなどに保存しておくと良いでしょう。

また、「緊急の待ち合わせがあるのに前歯の仮歯が取れてしまった」など応急処置を行う際は、瞬間接着剤などは決して使わず、ポリグリップなど一時的に装着を行えるアイテムを用いるようにしましょう。

一時的ですが、緊急生を要するときは上手く対処することが大切です。

歯科医院に行く

仮歯が取れてしまった場合は、迅速に対処することが大切です。

すぐに歯科医院に行くようにして下さい。

また、歯科医院に行くときには取れてしまった仮歯を持って行くのを忘れないようにしましょう。

仮歯が取れてしまってそのまま放置してしまうと、補綴物の土台となる歯がむき出しな状態が続いてしまい、歯の状況が悪化する可能性が高まります

又、最終補綴物の 型取りが終了している際は入らなくなります。

そのため歯科医院でしっかりと受診することが大切です。

また、受診の際にどのようなタイミングで取れてしまったか伝えて、取れないようなアドバイスを直接もらうのも一つの手段です。

まとめ

今回の記事では前歯に用いる仮歯について詳しくご紹介しました。

仮歯は外部からの刺激から守ったり、見た目を綺麗にしたりなど様々なメリットがあります。

仮歯を装着する際は、装着期間、値段などをしっかりと把握するようにしてください

また、食べ物に気を付けたり、汚れがたまらないようにケアを行うことが大切です。

万が一仮歯が取れてしまった場合は、取れてしまった仮歯を捨てないで、すぐに歯科医院に行くようにしましょう。