歯を薄く削り、セラミック系、ジルコニア等の板を貼ることで、歯を美しく見せることができる歯科治療を「ラミネートベニア」と言います。通院回数が少なくて済む、短期間で白い歯にできるということで、人気のある審美歯科の施術法であり、インターネット上でも話題に上がることが増えてきました。ラミネートベニアを扱う歯科も多くなっていますので、「試してみよう」という方は、気軽に相談することもできます。

ラミネートベニアのメリットは、上記のほかに、「長持ちする」ということがあります。いままでの治療に使われてきた合成樹脂や金属に比べ、ラミネートの材質は非常に変質しにくい材質だからです。とはいえ、人間の噛む力はとても強く、ラミネートベニアにも寿命があります。この寿命をできるだけ長くするには、どうすればいいのでしょうか。

今回は、ラミネートベニアの寿命(耐久年数)や、寿命を延ばすための方法をご案内します。

ラミネートベニアの寿命とは?

自分の歯と同じように常に口の中にあり、噛むことで毎日使うラミネートベニア。定期的なクリーニング(PMTC)や、歯の漂白「ホワイトニング」よりも長持ちすることで好評ですが、ラミネートベニアの一般的な寿命はどれほどなのでしょうか。

ラミネートベニアの平均的な寿命は、10~20年程度

ラミネートベニアの平均的な寿命(耐久年数)は、一般的には「10~20年程度』と言われています。ラミネートベニアのチップ(削った歯の表面に貼り付けるもの)に利用される素材は、人間の歯と同じレベルの強度と耐久性があると言われていますが、やはり神経の通った歯とは異なりますし、材質自体が変質しなくとも接着剤が劣化してしまう場合などもあるからです。

接着剤の劣化は、施術後5年が目安

接着剤の劣化は施術後4~5年が目安と言われていました。接着剤にもさまざまな種類があり、医師によって採用するものは異なります。近年はさらに研究が進み、接着力が強く長持ちするものに変わっているため、一般的な使い方をしているのであれば、4~5年で剥がれてしまうことはごくまれだと考えてよいでしょう。マウスピースの使用頻度でもかなり影響されます。なお、噛み方や歯並びなどによっても耐久期間は異なり、個人差がありますのでご注意ください。

施術から3年以上経過している場合は定期診断に

とはいえ、「一般的な使い方」であるかどうかは、医師が判断するものです。自分では普通に噛んでいるつもりでも、ラミネートベニアが剥がれやすい噛み方をしてしまっている恐れがあります。そのため、他の歯のメンテナンスも兼ねて、定期的な検診がお勧めです。施術から3年以上経過している、マウスピースを使っていない、などの場合は特に、一度歯科クリニックを訪れてみたほうがいいでしょう。

ラミネートベニアの美しさを保つには

ベニアに使われる材質は金属や合成樹脂など、他の修復物に比べ非常に変質・変色しにくい素材で通常は吸水性がない為、最初と同じ色を保つことができるのです。なお、嗜好品などにより外来性の色がベニアの表面に乗る事から着色が早まってしまう場合もあります。

・喫煙をしている

・コーヒーや紅茶などステインが付きやすい飲み物を好む、カレーやキムチなど色素が残りやすい食べ物が好き

・毎日、十分な歯磨きをしていない

ただし、あくまでも歯に馴染む程度の変色であり、再びベニアを入れ替えなければならないような変色や、自然歯のような変色はないため、ご安心ください。定期的に歯科に通い、メンテナンスをすることで美しさも保つことができます。また、内側からの変色として避けられない接着剤の経時的変色があります。とてもゆっくり変わっていく為、通常は気が付かない程度です。これはベニアの特性である透明感が強いので接着剤の色に影響されるからです。接着剤とベニアの間に遮断させる色を入れる(マスキング)事で避ける事が出来ますが施術後のイメージが変わりますのから歯科医師に相談してみましょう。

ラミネートベニアの施術を行う際、最初のカウンセリングで周囲の自然歯に馴染む色を選ぶことができますが、施術後に自然歯の色が濃くなってしまうと施術した歯が目立ってしまう場合があります。美しい歯を保つために重要なのは、ラミネートベニアをした歯を含むすべての歯のメンテナンスをきちんと行うことだと考えましょう。

ラミネートベニアが取れやすい場合とは?

ラミネートベニアのチップは特殊な接着剤で貼り付けるため非常に取れにくいものですが、それでもやはり取れてしまうケースもあります。では、チップが取れやすくなってしまうのは、どんな場合でしょうか。

施術直後で接着剤がまだ安定していない場合

ラミネートベニアは接着剤を用いて歯に貼り付けます。接着剤に特殊な光を当てることで瞬間的に固めるので、治療後にはもうしっかりと固定されています。ただし、やはり時間が経過したほうが安定するものであるため、直後に強い力がかかると、ずれてしまう可能性があります。

硬いものを噛むなど歯に負担がかかる場合

ラミネートベニアに使うチップは強度のある材質ですが、歯も欠けてしまうことがあるように、特定の場所に強い負担がかかると、取れやすくなってしまうこともあります。そのため、ある程度食べ方に注意が必要です。食べ方についてはこの後の章にて、詳しくご説明します。

ラミネートベニアの適していない人とは?

ラミネートベニアは多くの人が実施できる施術法ですが、その人の癖や歯の状態によっては適していない場合もあります。それはどのような場合でしょうか。

歯ぎしりが強く噛み締め癖のある人

ラミネートベニアは、通常の咀嚼で欠けてしまう心配はありませんが、強い力で噛み締めてしまうと接着面から剥がれてしまうことがあります。

・睡眠中、歯ぎしりをする人

・日常的に噛み締めの癖がある人

このような方は、他の人よりもラミネートベニアに負担がかかり続けることになり、あまりラミネートベニアに適していると言えません。実は、歯ぎしりや噛み締めは自分の体重以上、場合によっては300kgほどの力が加わっていることもあり、ラミネートベニアが耐えきれないほどの負荷をかけていることもあるのです。

自分が歯ぎしりをしているかどうか、噛み締め癖があるかどうかは、自分自身で判断できないこともあるため、まずは歯科医師に相談してみましょう。歯の削れ方や歯茎や骨の発達で、噛む力の強さや歯ぎしりの癖があるかどうかをある程度判断することができます。「目覚めたとき、顎が疲れている」「歯の治療を受けた際、歯が削れていると指摘されたことがある」「普段から肩こりがひどい」といった方は特に注意しましょう。歯ぎしりや噛み締めはストレスが原因であるという説もあり、昔はそのような癖がなくとも、現在は違う、という場合もあります。

噛み合わせに問題のある人

ラミネートベニアは軽度の歯科矯正の効果もありますが、噛み合わせの問題が大きい方の場合はラミネートベニア自体が困難である場合もあります。「表面に貼り付ける」という技術ですので、表面がしっかり出ていない場合や、噛み合わせでシェルが外れやすい位置になってしまうなどのことが考えられます。

なお、シェルを貼り付ける面積を小さくすることも可能ですが、接着面自体が小さくなることになり、接着力も落ちてしまいます。

上記のような場合、事前のカウンセリングで十分に相談し、どういったリスクがあるのかということも把握した上での施術が必要です。ラミネートベニア以外の治療も提案してもらい、しっかりと判断するようにしましょう。

ラミネートベニアの寿命を延ばす方法とは?

10~20年程度と言われるラミネートベニアの寿命ですが、やはり人によって差があります。どうすればラミネートベニアを長期間保つことができるのでしょうか。

食べ方に気を付ける

ラミネートベニアの施術を受けた場合、「食べ方(噛み方)」に気をつけるとチップがより長持ちします。特に硬いものを噛む場合は、「できるだけ施術をしていない歯や、噛む力が強い奥歯で噛む」ことが重要です。これにより、施術部分に大きな負担をかけずに済み、ラミネートベニアが剥がれたり割れたりする危険性が減ります。また、「極端に硬いものはそもそも食べないようにする」ということも頭に入れておきましょう。小さく切る、薄く切る、スープやドリンクに浸すなどの工夫で、硬いものも食べやすくなります。

歯並びを悪くする態癖をなくす

歯並びが変わってしまうと、歯の表面が他の歯と重なってしまうことがあり、ラミネートベニアは外れやすくなります。歯並びを悪くしてしまう癖としては、次のようなものがあります。

・頬杖をつく

・食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまう(早食いの癖がある)

・口を開けたままでいる(口呼吸をしてしまう)

・歯ぎしり、噛み締め

・舌で前歯を押してしまう

・唇を噛む

これらは歯並びを悪化させてしまう原因と言えるものです。「成長期でなければ関係ないのでは」と思われるかもしれませんが、成人後にもこのような癖を長年続けてしまうと、歯並びや顎の形にも悪い影響を及ぼします。癖は自分自身で意識して治せるものもありますが、口呼吸をしてしまう場合や、歯ぎしり、噛み締めなど無意識に行ってしまうものについては、専門の病院で相談をしたほうがよい場合もあります。

定期的に歯石の除去など口腔内のメンテナンスをする

ラミネートベニアを長持ちさせるために重要なことは「歯の状態を変えないようにする」ということです。つまり、口腔内のメンテナンスを行い、虫歯や歯槽膿漏などを避けるようにすることが非常に重要なのです。定期的に歯科に通い、虫歯の原因となる歯石の除去も行うようにしましょう。

また、自分自身でのケアも重要です。歯ブラシによるブラッシングだけでは不十分なことが多いため、デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間も磨くようにしましょう。

少しでも異常があれば歯科でのチェックを行う

ラミネートベニアが削れたり割れたりしてしまわなくとも、口の中に少しでも異常があれば歯科を受診するようにしましょう。土台となる歯が削れた場合などには、ラミネートベニアも剥がれてしまう場合があります。その前にある程度のメンテナンスや調整を行うことで、ラミネートベニアのつけ直しを避けることに繋がります。

技術が高い歯科医を探す

ラミネートベニアの施術が受けられる歯科は増えているものの、どの歯科でも可能というわけではありません。「矯正治療」と「審美治療」の両分野について専門的な知識のある歯科医師やクリニックを探すことが重要です。

探す方法としてはインターネットでの検索が便利です。「歯科」「ラミネートベニア」に加え、自分が通える範囲内にある地名を入れて検索してみましょう。

・どのような治療方針なのか

・ラミネートベニアの施術について、メリット・デメリットを含めて説明しているか

・その説明文章はわかりやすいか

・価格の目安ははっきりと提示しているか

・ラミネートベニア施術経験がある歯科医がいるかどうか

・ラミネートベニア施術例の写真などが提示されているかどうか

歯科のサイトでは、上記のようなことも確認してみてください。

第三者によるレビュー・口コミサイトも参考になりますが、サイトによっては非常に主観が強く、客観的な判断が難しくなってしまう場合があります。あくまでも判断材料のひとつとして読むようにしましょう。重要なのは「実際に説明を受け、自分自身の不安や不明点が解消できるかどうか」です。実際にラミネートベニアを行うかどうかはカウンセリングを経て決めるものですから、カウンセリングやそれ以前の対応で不満な点がある場合には、遠慮せずに別の歯科も訪れてみましょう。

マウスピースを利用する

ラミネートベニア接着後はマウスピースを入れてシェルを定着させます。このマウスピース(マウスガード、ナイトガード、スプリント、スタビリゼーション型スプリント、ミシガンタイプスプリント、など)を一日のうち可能な限り多くの時間に装着していると、ラミネートベニアの寿命を延ばすことが可能です。就寝時や一人で没頭して仕事をしているときなどは積極的にマウスピースを利用しましょう。

【まとめ】

ラミネートベニアの寿命(耐久年数)は10~20年程度ですが、利用者によっては、この寿命に10年程度の差が出てくるということを覚えておきましょう。これは、メンテナンスの頻度や自分自身の癖も関係してくるものです。ラミネートベニアによる治療そのものは非常に短期間で済みますが、維持のために意識して行うべきことがあることを頭に入れておきましょう。

なお、適性でなかった場合には、歯の漂白「ホワイトニング」を選ぶという方法もあります。ホワイトニングにもさまざまなものがあり、時間をかけずにできるものや、ラミネートベニアが難しい歯にも対応できる場合があります。かかる期間や費用なども考え、無理なく施術ができるものを歯科医と相談して進めていくことにしましょう。ラミネートベニアはすぐれた審美歯科の技術ですが、あくまでもご自身にとってベストな方法を選ぶことが重要です。