意外に思われるかもしれませんが、我々の日常の診療の半分以上は、
前の先生がされた処置のやり直しで占められています。
これは、前の先生の治療技術が劣る、ということではなくて(そういう症例も
中にはありますが・・・)、ある理由があります。
口の中はとても過酷な環境で、主に保険診療で使用される金銀パラジウム合金
という金属は口の中でイオン化して、要は錆びてしまい、詰めたり被せたり
している歯との境界に目に見えないレベルでの隙間ができ、そこから新たに
二次的な虫歯ができる、という現象がどうしても起きやすいからです。
これは、先日の診療日記に引用した文章にも詳しく記載があります。
二次的な虫歯が出来たら治療のやり直しです。どんな名人がやろうと、
やり直しをする際には、汚染された部分を取り除くため、必ず元の詰め物
よりも大きく削らないと治療ができません。
やり直しの回数が多いほど歯は大きく削られて、ある限度を超えると抜歯
せざるを得ません。
どんなに優れた最高の材料だったとしても、口の中でいつかは詰め物や
かぶせ物は傷んで再治療が必要になる可能性がゼロにはなりません。
しかし、優れた材料であればあるほど、やり直しの回数が少なくて済みます。
抜歯へ至る可能性も低く抑えることができます。
症例の数が違うので、単純に比較はできませんが、日常の診療の中で
金合金やセラミックの詰め物やかぶせ物をやり直しのためにはずすことは
殆どありません。
しかし、冒頭でも述べたように金銀パラジウム合金はやり直しのために
毎日必ずはずしています。
保険診療は安価な治療費のうちの3割だけの負担になるのに対して、
金合金やセラミックの歯で治療をする自費診療は、高額な材料費や
技術料の10割すべてを負担するために経済的な負担は十~数十倍にもなります。
高いなぁ、と思われるのは致しかたないことですが、質が高いが故の差
である、ということを知って頂けたらいいな、と今回、解説をさせて
いただきました。
今後の治療の選択の際にご参考にしていただければ幸いです。
三留